今日は45日目
とうとう最後のお寺、12番焼山寺へ臨む日。
登り口は11番藤井寺の中にあるので、
まずは宿から歩いて2K程度の藤井寺へと向かう。
向かうのは以前に藤井寺から鴨島駅へと歩いた道。
逆方向へ進むわけだが、通ったときの記憶がよみがえる。
あの時は駅までが遠く感じたのに、
今日はあっけなく着いてしまった。
登り口には女体山への入り口で見て以来の案内書き。
「健脚5時間 普通6時間 ○○7時間」
○○はゆっくりという意味の言葉が書いてあったが、
よく見なかった。
「難所」と言われるぐらいだから、なんとなく大変な
イメージを持っていたのだが、ちょっと唖然としてしまった。
でも、考えてみれば藤井寺から焼山寺までは12.9Kの
山道なのだから、それくらいかかって当然だ。
とにかく何時間かかろうと登るしかない。
最後のお寺への一歩を踏み出す。

山のすがすがしい空気。
いきなりの坂道だが、リュックを下から誰かが
支えてくれているのでは?と思うぐらい
背中が軽い。
登り始めて30分もしないうちに、私より先に山へ入った人が
立ち止まったり、休憩している姿が見える。
まだ、真新しい白衣。
私も順序どおりにこの道をたどっていれば
同じようになっていたことだろう。
それどころか、ここで挫折し帰ってしまったかもしれない。
そんな思いが頭をよぎる。

一言で「登る」といっても、登ったと思えば下り
また登るの繰り返し。
そうして徐々に山の奥へと分け入っていく。
息が切れていても、辛くも苦しくもなく
楽しくて、うれしくて、ありがたい思いでいっぱいだ。
いまこうして、この山道を歩いていられること。
何事もなく、ここまでたどり着けたこと。
そして、この道を楽しませてくれるに至った
山々や峠に思いをはせる。
柳水庵のところまで来ると、以前そこには五右衛門風呂があり
宿泊もできるようになっていたと、そこで休憩していた方から
教えていただいた。
自動車道を横切り、急な上りをしばらくあがっていくと
石柱が現れ、巨大な杉の木が視界を占めた。
「うわっ、すごい…」と思わずつぶやく。
一本杉と呼ばれるその木は、いにしえの道しるべにも
なっていたであろう。

その「一本杉峠」を越えて下り、また上りへと続く。
山々の重なりが美しく見える。
しばらくはこういう景色ともお別れになると思うと名残惜しく、
その場にたたずむ。

とうとう焼山寺に着いた。
かかった時間は4時間45分。
「ゆっくり足」だと思っていた自分が、いつの間にか
健脚へと変わっていた。
重い荷物が肩に食い込み、雨や雪に悩まされ
強い風に押し戻されたあの日々が、
私をここまで鍛えてくれたのだ。

お参りを済ませるが、涙はない。
満願の地、大窪寺で流した涙は感無量だった。
今日はなんとなくご褒美をもらった気分。
すがすがしく、うれしい道のりを私に下さって
本当にありがとうございます、と
思わず何度もつぶやく。
13番大日寺への道を下っていく。
このまま2周目を歩いてしまいそうな感じだ。

大日寺へは複数のコースがあるが
その中で、寄井方面へと歩いていく。

焼山寺にどれくらい時間がかかるかわからなかったが
あわよくばそのまま徳島へ出て、
家路につこうと考えていた。

バスの時間があるので、ゆっくりと下り
寄井に着いたのは15時ごろ。
十分、名古屋まで帰れる時間だ。
15時36分、城西高校神山分校の前から
徳島行きのバスに乗る。
「お客さん、このバス石井経由だけどいい?」
「徳島駅に行きたいんですけど。」
「あぁ、ならいい。大日寺に行くならこれだとね。」
気を利かせてくれた運転手さんの言葉に
私は旅の終わりを実感する。
徳島駅に16時50分頃着、
高速バス17時20分発大阪行きの切符を買う。
慌ててみやげ物を見繕い、バスに乗り込んだが
お腹がぐぅ〜と鳴っている。
いつもならすでに宿入りし、お風呂に入って
食事を待つばかりの時間だ。
お弁当を買う時間がなかったので、手持ちの
予備用食料を食べ、また一段と旅の匂いが薄らいでいく。
19時40分、JR難波で降り、近鉄難波駅へ向かう。
そして20時発の電車でとうとう名古屋へ。
22時08分、名古屋到着。
今朝、焼山寺への登り口にいたのがまるで嘘のようだ。
名鉄の乗り場へ向かうと、事故のため運休していたが
21時30分ごろ運転を再開したとのアナウンス。
すでに30分以上たっているので大丈夫かと思い駅へ降りてみると、
ホームは電車を待つ大勢の人でごった返していた。
最後まで予定通りにはいかないものだ。
乗った電車は途中で停車し、なかなか進もうとしない。
最寄の駅に着いたのは23時少し前。
なにはともあれ、無事に家までたどり着くことができた。
45日間にわたり、メールやコメントで
私を励まし支えてくれた皆様、
またこのブログをご覧頂いた皆様、
本当にありがとうございました。
皆様のお陰でくじけそうな日々を乗り越え、
見てくださっているということを糧にして、
毎日ブログを更新することができました。
私からの感謝の気持ちが皆様に届くことを祈っています。
そして、ご縁を頂き私を助けて下さった方々、
お接待を下さった皆様、
この旅で出会い、一緒に歩き、アドバイスを頂き、思い出を共有し
気にかけて頂いたお遍路の方々、
私はあなた方の存在なくして、四国遍路を
成し遂げられなかったかもしれません。
なんとお礼を申し上げればいいのか、
本当に、本当にありがとうございます。
私にもっとすばらしい感謝の言葉を見つけられればいいのですが。
これにて四国遍路1回目は終了。
思い起こせばこの45日間本当に幸せでした。
2回目があるのかないのか、それはわかりませんが、
また皆様にお会いできる日を念じて、
合掌。